プログラム

この公開講座では、「クリエイティブ産業」に関連する諸問題について、原則として毎回3名の登壇者が、多面的な観点から講義を行ないます。1コマ90分の授業時間のうち、講演に約60分、質疑応答に約30分の時間を充てる予定です。

 

3コマの講義の後に、授業実施責任者が、法的な観点を踏まえながら、その日の「まとめ」を行なうとともに、登壇者および出席者を交えて質疑応答を行います。この「まとめ」のセッションに、45分程度の時間を取る予定です(11月24日(土)は、日本文化政策学会第12回年次研究大会との共催であるため、進め方が異なります)。

第1回

2018年11月17日(土) 10:30-17:30

クリエイティブ産業と現代社会

 

講演者

小島立(九州大学大学院法学研究院准教授)
萩平勉(一般財団法人ファッション産業人材育成機構理事長)
木村誠(はかた伝統工芸館館長)

 

開催場所

九州大学大橋キャンパス5号館2階525講義室

 「クリエイティブ産業」という言葉は、英国の文化・メディア・スポーツ省(以下、「DCMS」という)が1998年に発表したレポートにおいて初めて用いられたと言われますが、そこでは、クリエイティブ産業とは、「個人の創造性、技能、才能に由来し、知的財産の生成や活用を通じて富や雇用を創出する潜在力を持つ産業」を指すとされていました。また、わが国におけるクリエイティブ産業支援においても、①ファッション、②食、③コンテンツ、④地域産品、⑤すまい、⑥観光、⑦広告、⑧アート、⑨デザインの産業分野がクリエイティブ産業として挙げられています(野村総合研究所『平成23年度知的財産権ワーキング・グループ等侵害対策強化事業(クリエイティブ産業に係る知的財産権等の侵害実態調査及び創作環境等の整備のための調査)報告書』(2012年))。

 これらの説明から分かるように、クリエイティブ産業は、「ものづくり」、「まちづくり」、「コトづくり」といった現代的事象に深く関係します。「ソフト化」や「スマート化」が急速に進みつつある現代社会においては、より多くの産業と、その営みに関わるアクターの活動に「クリエイティブ」の要素が関わることは避けられません。

 このセッションでは、現代社会におけるクリエイティブ産業の現状、クリエイターやメディアなどの関係するアクターの役割、クリエイティブ産業支援の制度設計のあり方などについて多面的に検討を行いたいと考えています。


第2回

2018年11月24日(土) 10:30-17:45

クリエイティブ産業を分析する現代的視座――「社会デザイン」としての文化政策

【日本文化政策学会第12回年次研究大会と共催。18:00-20:00に懇親会(要事前申込)、20:00-21:30に屋台大学を併せて開催


講演者
水野祐(弁護士・シティライツ法律事務所)
ほか

 

開催場所

九州大学大橋キャンパス多次元デザイン実験棟およびデザインコモン

 

日本文化政策学会第12回年次研究大会のプログラムの詳細については、日本文化政策学会のウェブサイトをご参照下さい。また、懇親会へのご参加を希望される方は、下記ウェブサイトから事前申し込みをお願い致します。

 クリエイティブ産業は、前述した英国の文化・メディア・スポーツ省(DCMS)の定義が「個人の創造性、技能、才能に由来」すると述べるように、文化芸術の世界に深く関わっています。したがって、クリエイティブ産業について考察するためには、文化芸術を取り巻く環境の現状とその変化について理解することが不可欠です。
 近時の文化芸術を取り巻く環境に目を向けると、『文化芸術推進基本計画――文化芸術の「多様な価値」を活かして、未来をつくる』(2018年3月6日)においては、「文化芸術の『多様な価値』(本質的価値及び社会的・経済的価値)を創出して未来を切り拓き、文化芸術の価値を重視する社会を築く」と述べられています。他方で、『未来投資戦略2018――「Society 5.0」「データ駆動型社会」への変革』(2018年6月15日)においては、「『文化芸術推進基本計画』及び『文化経済戦略』に基づく、文化芸術による経済の好循環実現」という表現が見られます。

 このセッションは、日本文化政策学会第12回年次研究大会と共催の形で開催します。ここでは、「社会をデザインする」役割が期待されている文化芸術のあり方について検討することにより、クリエイティブ産業と、そこに関わるクリエイターやメディアなどの果たすべき役割についての理解を深めることができれば、と考えています。


第3回

2018年12月8日(土) 10:30-17:30
「Society 5.0」におけるクリエイティブ産業の役割(1)――「プラットフォーマー」に関する諸課題を中心に

【共同開催:九州大学法学部連続シンポジウム「Society 5.0」における技術と法】

 

講演者

伊澤一雅(一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)常任理事)
渡部友一郎(弁護士・Airbnbシニアリーガルカウンセル)
田上嘉一(弁護士・弁護士ドットコム株式会社ゼネラル・マネージャー)

 

開催場所

九州大学大橋キャンパス5号館2階525講義室

 サイバー空間と現実空間の融合が進展する「Society 5.0」の到来が目前に迫りつつある状況においては、ビッグデータを活用してビジネスを展開する「プラットフォーマー」が力を増すとともに、「シェアリングエコノミー」や「フィンテック」などの新しいビジネスの形も登場しています。さらに、ブロックチェーン技術を活用することにより、音楽配信を含めたデジタルコンテンツ取引にも大きな変化が起こることが予想されます。

 これらの革新的な技術は、クリエイターやメディアなどのクリエイティブ産業に関係するアクターにどのような影響を与えるとともに、現代社会をどのように変えつつあるのでしょうか。そして、これらの技術革新がもたらす成果を取り入れつつ、新しい社会の仕組みを適切に形作るために、私たちはどのように規制を行うとともに、新しい技術の導入に当たって生じる不確実性を低減するべく、法制度の設計を行うべきなのでしょうか。

 本公開講座の後半2日間のセッションでは、クリエイティブ産業が「Society 5.0」においてどのような貢献をできるのか、そのような社会における「クリエイティブ」の要素の意義とは何かということについて検討したいと考えています。

 このセッションでは、デジタル音楽配信、「シェアリングエコノミー」、「リーガルテック」など、広い意味での「プラットフォーマー」に関係する諸課題について掘り下げていく予定です。


第4回

2018年12月15日(土) 10:30-17:30
「Society 5.0」におけるクリエイティブ産業の役割(2)――「ものづくり」「まちづくり」に関する諸課題を中心に

【共同開催:九州大学法学部連続シンポジウム「Society 5.0」における技術と法】

 

講演者
田中浩也(慶應義塾大学環境情報学部教授・ファブラボジャパン発起人)
園原吉光(株式会社安川電機技術部技術企画部長)
江村克己(NEC取締役執行役員常務兼CTO(チーフテクノロジーオフィサー))

 

開催場所

九州大学大橋キャンパス5号館2階525講義室

 サイバー空間と現実空間の融合が進展する「Society 5.0」におけるクリエイティブ産業の役割について考えるセッションの2回目です。

 このセッションでは、「デジタルファブリケーション」、「ロボティクス」、「コネクテッドインダストリーズ」などの問題について掘り下げ、いわゆる「ものづくり」や「まちづくり」が、「Society 5.0」においてどのように変容していこうとしているのか、そして、そこでの法による支援のあり方はいかにあるべきか、という課題について考えていく予定です。


本企画は、九州大学の人文社会科学系を中心とした異分野融合による新たな研究分野・研究課題の開拓を目指す協働研究教育プラットフォームである「人社系協働研究教育コモンズ」の関連企画です。